その日も、私はいつものように学校からの帰り道にある
小さい稲荷神社の前にさしかかろうとしていた。
それはいわゆる「逢魔ヶ時」だった――――。
逢魔ヶ時
(あぁまた今日もここ通らなきゃ。ちょっとここ薄暗いからやなのよねー。)
前方に見えてきた稲荷神社の鳥居を見ながら、私はそんな事を思って歩を進めた。
すぐ右斜め前に神社の鳥居が見え、さしかかった時だった。
ぼうっと何か白いものが浮かび上がった。
私は突然の事にびっくりして「きゃーーーーー!!!!」と叫び声をあげ、
目をつぶって一目散に逃げ出した。
家に帰ってからも鼓動がおさまらなかった。
その日、その事を家族に話しても誰も信じてくれなかったし、
「気のせいでしょ?」としか言われなかった。
違う。気のせいなんかじゃない。この目ではっきり見たんだ。
白いものが鳥居のところに浮かび上がるのを。
あれは・・・何だったんだろう・・・?
次の日、学校で友達にこの事を話すと、
「何それー。何か悪い事でもしてして恨まれたんじゃないの?」
とからかい半分の反応だった。
悪い事?そんな覚えはない。大体最近その神社に拝んだ事もないし・・・。
ってあ、そうか、拝まないからいけないのかな?
ふとそんな事に気付いた私は、今日は帰りに拝んで帰ろうかなと思った。
そして・・・
また帰り道、あの鳥居の前に来た。
少しドキドキしながら私は鳥居の前で手を合わせて拝んだ。
(どうか、どうかもう出ませんように――――。)
ふと目を開けると、またぼうっと社の方で光が浮かび上がった。
私は思わず腰を抜かして、その場にひっくり返ってしまった。声も出なかった。
(うそ――――!!)
私は何がなんだか分からなくなって、しりもちをついたままその光を見ていた。
すると、白い光の中に何か見える。
(え・・・。何、キ・・・ツネ?)
白い光をよく見ると、キツネの姿が見えた。しかも泣いているようだ。
でも足はなく、幽霊のように細く、足先は消えていた。
(な、何で・・・泣いてるの?)
そのままじっと見ていると、光はすうっと消えてしまった。
あたりは何も変わっていない。いつもと同じ風景だった。
(あ・・・あれ?き、消えちゃった・・・。)
私は何とか立ち上がってあたりを見回したけれど、白い光はもうどこにもなかった。
(一体・・・何だったの?)
翌日私は部活で帰りが遅くなった。またいつものように鳥居の前にさしかかった。
しかし・・・何も起こらないまま通り過ぎた。私はあれ?と思い振り返ったけれど、
あたりはしんとしていてどこも変わった様子はなかった。
(夜は出ないのかしら・・・?)
そんな事を思いながらまた歩き出した。
その日の夜・・・私は夢を見た。
夢にはあの白い光の中のキツネが出てきた。
やっぱり泣いている。よく見るとしっぽの先がなく、いびつになっていた。
ケガでもしたのだろうか。
翌朝目覚めても、はっきりとこの夢は覚えていた。
その日私は休日だったので、思い切って神社に行ってみる事にした。
(夢にまで出てくるって事は何か伝えたい事があるんだ、きっと。確かめなくちゃ。)
夕方だと少し怖いかなと思ったから、昼間に行く事にした。
昼間でも神社の周辺は人通りがない。
だから余計昼間でも少ししんとしていてこの辺はさみしい。
私は小さな鳥居をくぐって中に入った。
中には小さなお社と、狛狐が二体いるだけだ。
どこか変わったところはないかと見回していると、
右の狐のしっぽの先三分の一が欠けている事に気付いた。
(あれ?この狐しっぽが欠けてる・・・。夢で見た狐と一緒だ。)
顔を見ると、心もち少し悲しそうな顔をしているように見えた。
(もしかして・・・この狐が出てきたのかしら・・・?)
私はその狐の周辺を見回した。しっぽの欠けた部分が落ちてないかと思ったのだ。
ふと、少し離れた所に右のかけらを見つけた。
拾ってさっきの狐のしっぽの部分に当てると、丁度当てはまった。
しかし・・・手を離すとすぐにはずれてしまう。
(これ・・・石屋さんにでも頼まないとだめかしら。でも・・・一体なんで欠けたんだろう・・・。)
あっ!!と私は思い出した。そういえば今から四、五日前に、近くに雷が落ちた事があった。
たしかこの神社のあたりだった。
(まさかあの時の・・・。)
丁度キツネが出始めたのもその後からだった。
このキツネは・・・しっぽを直してほしくて私の前に現れたのだろうか・・・。
その後、私は近所の石屋さんに話し、直してもらう事になった。
しばらくしてから石屋さんから「直った」と連絡が来た。
その日の夜、私はまた夢を見た。
夢にはまたあのキツネが出てきた。
でも今度は笑っていた。
元気そうに走って消えていった。
翌日、私は神社に行った。
しっぽの欠けた狛狐のしっぽは、もうすっかり直っていて、
表情も以前の悲しそうな顔ではなく、微笑みに変わっていた。
(良かったね。)
私は話しかけて神社を出た。
鳥居をくぐる時、「ありがとう」と誰かに言われた気がした。
逢魔ヶ時 終
〜逢魔ヶ時・あとがき〜
やっとこさ載せる事ができました!!見にくいかもしれませんが、
私の中ではこの壁紙だろう!!と思って付けたので・・・(^_^;)すみません;
表記がひらがなだったりカタカナだったり、漢字に変換されてないところがありますが、
それは故意ですのでお見逃しを・・・;
実はこの話、もう一つ別バージョンを考えていたのですが、この話を書き終えた時点で
これの方が良いかも・・・;と思ったのでこっちにしました。
というか別バージョンは頭の中だけで実際には書いてません。
なんかこっちより後味があまりよろしくないだろうなぁ〜と思ったので。
二バージョン書いて読み手さんに選んで貰い、二種類エンディングを用意しようかとも考えましたが、
明らかにこっちが自分的にはよくまとまっちゃった(?)と思っているのでこっちだけにしました。
まだまだ表現等拙いところがありますが、ここまで読んで下さってありがとうございましたm(_ _)m
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